この本は、男女差別・ワーキングプアを中心とした社会問題を、西原さん・雨宮さんとの対談などから、勝間さんが議論している本です。
まず、若者達が抱えている不安を
人はみな、もって生まれた自分の力を十分に発揮して、社会の一員として自分の価値を確信するとともに、私生活では伸び伸びと楽しむための政治的自由と経済的余裕がほしい、と思っているはず。(p.24)と分析しているのですが、これが自分の心境にぴったりで、ビックリでした。
思っていた事を言語化してくれたような、すっきりとした気分がしました。
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あと、ラッセルの『幸福論』を引用して、
「競争中毒」になってしまうと、余暇をゆったりと楽しむ精神を失ってしまう。(p.36)っていうのも、的確だと思いました。ワーキングプアの一番の問題は、貧しいとかじゃなくて、精神的なダメージだと思います。
底辺の方で競争をさせられと、余暇を楽しむ精神的余裕も無い、お金も無い、で最悪の状態になってしまいますね。
なので、僕もアメリカ流資本主義には反対なのですが…この状況でラッセルをぱっと引用できる勝間さん…さすがです。笑
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次は、興味深かった話。
日本人は資本収入を増やすべき、って言う話。(p.102)
資本収入が増えると、小金持ちが増えて、彼らがお金を使う…なるほど。
要するに、株に投資しなさい、という事だよね。
しかも短期じゃなくて長期で。
今、マーケットは荒れてるけど、あれは短期で売買してた人間から見た視点。
長期で売買してる人たちは、ある程度大きな資産を預けながら、配当をもらって儲けているので、短期のトレーダーほど痛手は負ってないはず。
金融工学もまともに武装しないで専門家に勝負を挑むのはバカだけど多い。
逆に長期保有をして、文字通り「会社に投資」する個人がいてもいいのにね。
FXとか、デイトレとかじゃなくて、「小資本家」がいてもいいのに。
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あと、p.166の勝間さんの質問の仕方が、コミュニケーション上の参考になりました。
勝間さんが「自分はずっと慶應で、ワーキングプアはよく分からない」といった感じの事を雨宮さんに聞いた後に、
雨宮さんたちが見ている世界を、わからない人たちに説明するとすれば、どのあたりから、理解をしていけばいいでしょうか。という質問が素晴らしい。
自分の世界に突っ走りそうになっている雨宮さんを上手くコントロールしながら、具体的な説明をしてもらおうとする。
う~ん、なかなかできないな~。
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この本の最後には、勝間さんによる15の提言が提唱されているのですが、一つだけ「難しいな~」と思ったのがあるので紹介します。
女性に対する統計的差別を撤廃しましょう。
統計的差別とは、個別に評価をするとコストがかかるため、採用時や評価時に、統計的に過去の炯炯から演繹して、性別などの属性だけで判断してしまうことでを指します。(以下略)
という事。統計的差別は確かに問題で、本来は男女間以外も統計的差別はしない方がいいでしょう。
ちなみに、この本のp.170では
実際にフリーターに職を紹介したけれども、遅刻が多くて、勤まり切れなかったみたいな話
があったと紹介されています。
でも、利益を追求する企業は、社員を採用する際に応募してきた人の事を何も知りえない。
相手の性格、やる気はもちろん、どのくらい勤める気があるのか、どのようなキャリアを積みたいのか、どのくらい能力があるのか…
などは、分かるはずがない。(面接があるとはいえ、何だかんだで隠しきれると思う。)
とすると、結局はその人の過去の行動から推測するしかないのではないだろうか?
例えば、東大卒の人と高卒の人がいたら、どっちを採用するだろうか?
多分、皆東大卒の方を選ぶだろうが、なぜだろうか?
東京大学の教育を受けているからだろうか?
でも、当然、東京大学の教育を受けている人が全員、高卒のどの人よりも優れているはずがない。
そう考えると、結局は「東京大学卒の人」と「高卒の人」を比べると、統計的に東大卒の方が優秀だから、と言わざるを得ない。
結局は、何でも統計的推測なんだと僕は思う。
もちろん、男女差別については、これは「一家の大黒柱モデル」などの過去の文化を受け継いだ物であるなら対応策が必要だが…。
女性の自由を守る事も大事だが、仮に同様の条件で入社した男女をサンプリングした結果が、こうなのであれば(多分違うであろうが)、これは「統計学的に正しい」事になるし、企業の目的と合理性を持つ。
もちろん、そんなサンプリングは不可能だし、色々と難しい問題になりそうだけど…。
他にも、紹介しきれなかったけど、欧米型資本主義の話とか、いい事が色々書いてあるので、皆さんも読んでみるといいですよ~。
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