「知的複眼思考法」とは、
あきたりの常識や紋切り型の考え方にとらわれずに、ものごとを考えていく方法(p.27)
の事であり、自分なりに考える力を働かせていくには必要不可欠だと言っています。
ステレオタイプに捉われたり、正解が必ずあると信じたりする事が、考える上で弊害になるので、それらを取り除く力、といってもいいでしょう。
これを創造的読書、作文技法、問いの立て方&展開の仕方、の3つのステップを踏む事で、知的複眼思考法を誰でも身に着ける事が可能だ、と主張しています。
まず創造的読書ですが、これは著者の意見を鵜呑みにせず、批判的に読む方法の事です。
前提や論理展開を疑ってみる事で、自分で考えながら、情報を噛み砕いていく作業です。
これを、著者は「著者と対等な立場に立つ」と表現しているのが印象に残っています。
次に作文技法ですが、意見が伝わるように文章家する方法の事です。
物を書く場合は、話す場合と比べて抑揚・身振り・場の雰囲気などが抜け落ちるので、より論理的に主張を積み重ねる必要があるそうです。
このため、上手い文章を書くためには、接続詞を適切に利用する必要があると主張されています。
また、ある意見に対する反論を書いてみたり、違う前提に立って意見を書いてみたりする事で、複眼的な視点が身につくのだそうです。
最後に問いの立て方と展開の仕方です。
疑問と問いとの決定的違いは、疑問が感じるだけで終わる場合があるのに対して、問いの場合には、自分でその答えを探し出そうという行動につながっていくという点にある(p.179)
と著者は主張しています。
このためには、問題を疑問文の形で的確に表現し、因果関係に関して仮説を立てる、といった行動が必要になります。
また、一度立てた問いを展開する時は、グループを小グループにして分けるのが良いと主張されています。
よく使われるロジックツリーに似てますね。
さらに、問いを一般化したり具体化したりしながら議論を発展させるために、概念やケースのレベルを変えてみると良いという話も印象に残っています。
最後に、関係論的な物の見方の重要性について著者は主張しています。
何かを絶対視しないで、周りにある様々な物との関係の中で捉える、という事です。
これは個人的にも感じていて、例えば自分の特徴を考える時なんかは、自分を絶対的に捉えずに、周りよりも相対的にどうだ、といった考え方をした方が結論に近づきやすいよな、っていうのはよく感じます。
この本に書かれている色々な事は、議論をする、ロジックで考える時の基礎となるのですが、
自分も含めて、現状で全てできている人は少ないんじゃないでしょうか?
誰にでも必要な能力だし、読みやすい文庫本なので、是非買ってみて読んでみてください。
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