2009年1月28日水曜日

『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
福岡 伸一

講談社 2007-05-18
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高校の生物の授業の時に、「生命とは何か?」という問から始まって一学期間DNAやら二重螺旋やら勉強したのですが、結論がよく分からぬままに終わってしまったのをよく覚えてます。

当時は期末試験があったので、とりあえず授業で習った内容の復習をやって済ましてたのですが、振り返ってみると、提示された問いに答えが出ないのはどうもすっきりしない。

その未解決だった問いについて調べるために、この本を読んでみました。

読んでみて分かったのは、「生命とは何か」を明確に定義する事は非常に難しいという事。

それは、最先端の生物学においても、やはり謎に包まれているわけなのです。

ただ一方で、生物は単なる物体と違い、驚くべきほどの複雑で素晴らしいメカニズムが内包されているという事も分かり、生命の凄さに驚かされました。

この本では、過去のノーベル賞に関連するような研究から、最新の研究結果まで幅広く扱いながら、その事が初心者でも分かるように平易な文章で、しかし詳しく説明されています。

本から得た事を要約すると、

「生物とは、動学平衡を保ちながらも常に変化しており、その変化の中で秩序を維持していくシステムである。」

という感じでしょうか。

この定義も全然不十分で、これだと普通の食塩水も生物になりそうですね。笑笑

是非、「生きるとは何か」と哲学してるような、文系の人に読んで欲しい一冊です。

2009年1月22日木曜日

『セルフトーク・マネジメントのすすめ』(鈴木義幸)

セルフトーク・マネジメントのすすめセルフトーク・マネジメントのすすめ
鈴木 義幸

日本実業出版社 2008-04-24
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外部から刺激があった時、それに応じて我々は行動を起こす。

この時、刺激は、

1.アイデンティティ・世界観・価値観などのビリーフによって処理される

2.セルフトーク(感情を左右する自分との対話)が発生する

3.感情が生まれる

という過程を経て、行動を引き起こしている。

外部からの同じ刺激に対する自分の行動を変える場合、

1.を変える場合は、自己啓発セミナーなどに参加する事で

3.を変える場合は、ポジティブシンキングやアファーメーションなどによって、

行動に移すレベルを変える場合は、認知行動療法によって、

それぞれ可能ですが、それでは大変なので

2.の部分を、自分でマネージメントする事によって変えましょう

という事を説明しています。

こんな発想をした事が無かったので、びっくりでした。

僕は自分との対話というか、声にならない独り言が多いタイプなので。

変なことを考えて空回りするのではなくて、

ポジティブな動機を自分の中に作り出して、まっすぐ進みたいですね。

興味深かったのは、

「スポーツの世界で一番上手くいくのは、セルフトークが無くなった時」だとして、それを「ゾーン」と呼んでいる事ですかね。

著者は剣道を取り上げて、日本の武道にある精神性は、ゾーンを作るところにある(ex.精神統一)と主張しています。

僕は武術をやった事は無いのですが、ピアノの前に座ってショパンとかを弾き始めると、セルフトークが一切無くなります。

逆に、バッハとかだとセルフトークが吐き出せます。笑

昔、僕がショパンを何よりも好きだったのも、こういうところと関係してるのかもね。

分類としては、「自己啓発」となるのでしょうが、少し味の違った本です。

内向的な人にお勧めなので、是非読んでみてください。

2009年1月16日金曜日

『本を読む本』M.J.アドラー/C.V.ドーレン

本を読む本 (講談社学術文庫)本を読む本 (講談社学術文庫)
Mortimer J. Adler Charles Van Doren 外山 滋比古

講談社 1997-10
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本をどのようにして読むべきか、について書かれた本です。

昔この本の存在を知った時、

「いつも本読む時間が無い無いって大変なのに、

何で本の読み方に関する本を読むために時間を使わなきゃならないんだ?」

って思ってましたが、

いざ読んでみると素晴らしい。

本を上手く読み飛ばす方法なんかも書いてあって、

将来、本が効率的に読めるようになるための投資になりました。

著者は読書を、

  • 初級読書:個々の言葉の意味を理解し、文脈を作り上げる事
  • 点検読書:一定の時間内で、内容をある程度拾って把握する事
  • 分析読書:能動的な読書を通じて、本の内容を消化する事
  • シントピカル読書:他の書物と比較しながら、目の前の本を位置づけること

の4つのレベルに分けて、どのレベルで読むかを考えて読むべきだと主張しています。

僕にとっては、毎回本を読む最初に点検読書を行い、分析読書に値するかどうかを検討する、

という感覚が新しかったです。

一冊一冊読んでると相当に時間がかかるし、

しかも、ある程度飛ばし読みしながらでも主題が理解できればいい場合も多いので。

そうすると、飛ばし読みされた著者の方には可愛そうな気もするけど、

多くの人の主張・考え方の概要に、短時間で効率的に触れる事ができますね。

本をよく読む人ほど、一度は目を通すと良いと思われる本です。

2009年1月13日火曜日

『きみのこと 好きだよ』

きみのこと好きだよきみのこと好きだよ
ディスカヴァー・トゥエンティワン

ディスカヴァー・トゥエンティワン 1994-08
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久しぶりの更新ですが、なぜか絵本みたいな本にしました。

とはいえ、奥が深くて素晴らしい本です。

「優秀な人」と「好きな人」の違いって何だろうな?って考えてみると、

優秀な人ってのは、ある程度定義しやすいし、客観性がある。

一方、人を好きという感覚は主観的で、なかなか説明できない。

その「好き」って感覚が、絵本として上手く表現されているのがこの本。

「こういう人が好かれる」という王道ではなく、

要はそこに愛嬌を感じるかどうかなんだな~って感じました。

一生懸命やる人も、すぐ人に頼る人も、

行動派な人も、めんどくさがりやな人も、

頭がいい人も、悪い人も、

皆どこかに魅力がある。

その魅力を肯定してもらえるか、もらえないかなのかな、なんて考えました。

そう考えると、

自分が好かれるかどうかは他人次第だし、

他人を好きになれるかは自分次第。

他人が自分をどう思ってるかを変えるのは難しいけど、

自分はなるべく色々な人を好きになれたらな、なんて思いました。

僕にとっての2008年は、

それまで「俺は○○で凄い!」っていうので認めてもらおうとしてたのが、

「俺は○○だけど、あいつは△△だし××だし、あいつは凄いや!」

っていう風に態度が変わった年でもありました。

今度は、それを「凄い」だけじゃなくて、

「好き」って感覚にも持っていけたら良いな。

ちなみにこの本、今は絶版で入手困難ですが、

http://d21.boxerblog.com/discover/2009/01/post-8a11.html

からPDFで見れます。

2009年1月3日土曜日

『クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門』(ポール・クルーグマン)

クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門
山形 浩生

春秋社 2003-11-22
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ノーベル経済学賞のポール・クルーグマン氏による、日本経済の不況に関する分析。

経済学には「流動性の罠」という概念があって、これは、金利が0%になっているために中央銀行が景気刺激策として金利引き下げができないような状態の事。

これは随分前にケインズが考えた概念だけど、経済学者はこれをあまり現実味の無い話として捉えていて、真面目に分析してこなかったんです。

ところが、日本は「失われた10年」くらいから、流動性の罠にはまっているって言われるようになった。

そこで、しょうがないから「教科書的な」解決策が正しいと信じて、とりあえず財政出動をしているのが今の日本。

また、同時に、理論的根拠の無い色々な処置をしてるのも事実。

まぁ、それは世界(=アメリカ)がそれを勧めたのも大きいんだけど。苦笑

そんな状況に対して、期待インフレを起こす事が経済学の観点から有効な経済政策である事を、論理的に厳密に証明しているのがこの本。

最近は金融危機で世界全体が流動性の罠にはまりつつあるので、参考になります。

普通のハードカバーにしては専門的だけど、数式はそこまで難しくなく、理系の人とか、経済学部専門課程の人なら余裕でしょう。

経済に関する定性的分析は色々騙されやすいので、

日本経済に興味がある人は、まずはこの本を読むと良いです。

分からなければ、簡単なマクロの教科書を紐解いてみると良いでしょう。