2009年4月13日月曜日

『大学時代に学ぶべきこと、学ばなくてよいこと』(鷲田 小弥太)

大学時代に学ぶべきこと、学ばなくてよいこと (PHP文庫)
大学時代に学ぶべきこと、学ばなくてよいこと (PHP文庫)鷲田 小弥太

おすすめ平均
stars的外れな気がする

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通学中に読みました。

鷲田さんは倫理・哲学系が専門で、教養を非常に大事にされる方です。

「教養人」と呼ばれるような人たちの書いた文章って、

論理展開が雑で、結構決め付けが多いので、あまり好きではありません。

たとえば、
  • 早稲田大学は遊ぶ人が多い
  • 札幌大学はレベルが低いからダメだ
とかいう、先入観から議論を始めたり、
  • かつての大学は、同年齢層の1割くらいの数の学生を相手にし、しかも、そのさらに一割、つまり、同年齢層の1パーセントに対して顔を向けていればよかった。(p.34)
というような場所が議論の出発点になっていて、

なかなか主張に賛同しにくい感じがしました。

WHY?と問うても文中に答えがないので、

この本を読んで鷲田さん自身から学ぶというのは難しい感じです。

こういう大胆な仮定をおいておいて議論を展開し、

仮定が間違っている事に気づいたら、

「私の主張は進化している。私は、間違いに気づいたらすぐに訂正できる、知識人なのだ。」

というような事を平気で言えるんだろうな。


ただ、論理的思考能力がない人が読んだら、全部同調させられて終わりそう。

僕の感覚だと、日本人の多くが論理的思考能力があるとは思えないので、

この本が売れているとしたら、少し怖いです。


まぁ、本書には良いメッセージも込められていて、学ぶことがたくさんあります。

「大学の講義に対して、『楽しもう』という意識が無ければ、それは楽しい物にはならない。」

とか。

一人の人の意見として、ざーっと読み通すのに最適な本かもしれませんね。

2009年4月9日木曜日

『アイデアのちから』(チップ・ハース&ダン・ハース)

アイデアのちから
アイデアのちから飯岡 美紀

日経BP社 2008-11-06
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おすすめ平均 star
star世界を動かすために必要な 6つのこと
starタイトルに偽りあり
starすごいアイデアは人を動かし、歴史を動かす!!

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どのような物が脳に残りやすいのか、つまり、何を発信すれば相手に響くのか、を分析した本です。

クリエイティブとは、天性や才能ではなく、知識と訓練なのだ、という事を主張しています。

とりあえず、アマゾンの評価が満点なのからも分かるように、相当な良書です。


さて、内容ですが、良いアイデアを作るためには、6つのポイントを抑えれば良いという事。

1.Simple 単純明快である

・核となる部分を見出す
・それを簡潔に伝える
  
2.Unexpected 意外性がある

・関心をつかむ:驚き、パターンを打ち破る
・関しんんをつなぎとめる:興味、謎を生み出す

3.Concrete 具体的である

・理解と記憶を促す:具体性をもたせる、マジックテープ理論・フックを作る
・強調を促す:理解度を同じレベルに持っていく、相手を利用する

4.Credible 信頼性がある

・外部からの信頼性
・内在的信頼性:人間的尺度を利用、シントラ・テストに合格、検証可能な信頼性を利用

5.Emotional 感情に訴える

・心にかけてもらう
・関連付けの効果を利用する:意味拡張と戦う
・自己利益に訴える:底辺だけに訴えないように気をつける
・アイデンティティに訴える

6.Story 物語性

・相手を行動に移す
a)シミュレーションとしての物語
b)励ましとしての物語


の6つです。

その頭文字を取って、Simpleとなるのだそう。

この本の魅力は、豊富な事例があって、一度読んだだけでそれが自分の脳に深く焼きついている事が体験できる事です。

上にあるように、テクニックだけ箇条書きにすると「本当かよ」って感じですが、実際に例を見て納得しながら読み進める事ができるので、本の内容を信頼しながら読み進める事ができます。

ちなみに、勝間和代さん推奨だそうで、最後の一言は勝間さんが書いていました。

クリエイティブになりたいと思ってる人は、是非読んでみてください。お薦めします。

Creativeという言葉に対するイメージが変わると思います。

2009年4月4日土曜日

『「脳にいいこと」だけをやりなさい』(マーシー・シャイモフ

「脳にいいこと」だけをやりなさい!
「脳にいいこと」だけをやりなさい!茂木健一郎

三笠書房 2008-11-07
売り上げランキング : 178

おすすめ平均 star
starポジティブ心理学をベースにした秀逸な本
starありがちな内容です。
star驚きました!?

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随分前から書店に並んでて、一回買って読んだんだけど、本棚を整理している時にもう一度読みたくなったので読んでみました。

内容はというと、

人生の目的とは、「幸せになる」事である。

某調査によると、人は一定の幸せ度を維持しようとする傾向がある。

宝くじが当たって超ハッピーな人も、数週間後にはもとの幸せのレベルに戻っている。

この「幸せ度」はの50%は後天的なものであり、環境要因は10%に過ぎない。

つまり、幸せの40%は、習慣的な考え方や気持ち、使う言葉や行動によって決まる。

それでは、この残り40%を最大限幸せな方向へ持っていこうではないか、という趣旨で、
  1. ネガティブ思考の「大掃除」をする。
  2. プラス思考で、脳にポジティブな回路をつくる。
  3. 何事にも「愛情表現」を忘れない。
  4. 全身の細胞から健康になる。
  5. 瞑想などで脳を「人知を超えた大いなる力」につなげる。
  6. 目標をもち、脳に眠る才能を開拓する。
  7. 付き合う人を選んで、脳にいい刺激を与える。
の7つの「脳にいいこと」を実践する事で、「幸せ度」が上がるでしょうと解いて、

この7つを詳細に説明しています。

後半の方は宗教っぽいし、反論ができない(=科学でない)ような物も多いんだけど、

「プラス思考でいなさい」「ハッピーに生きなさい」ってのは凄い大事。


読みながら気になった事が2つあって、

一つは、原書のタイトルは"Happy for No Reason"なんです。

直訳だと「理由が無くてもハッピー」といった感じでしょうか?

それが、茂木さんによって

「脳にいいこと」だけをやりなさい!

というタイトルになってる。

脳科学者の視点に立って、こいつは脳にいい事だ!と思って共感したんでしょうが、なんとなくとっつきにくいタイトルに感じました。

アメリカでは、脳とは関係ない、普通の自己啓発本なので、とっつきにくさが変わってるな~という印象を受けました。

二つ目は、「人生の目標は幸せである」というところが、この理論の前提にある事。

これ、英語でどう表現されてるのか、凄い気になります。

英語には主に楽しさを意味する"Happy"という単語に、「幸せ」という意味が付随しています。

フランス語には主に幸せを意味する"heureux"という単語に、「楽しい」という意味が付随しています。

日本語のように「幸せ」と「楽しみ」を区別する言語だと、「幸せ」の意味がはっきりするんだけど、原語版の著者はどのように表現したのでしょうか?

めっちゃ気になります。


まぁ、何はともあれ、習慣として身につけるには良い事が色々書かれてる本です。

本棚整理した後も、棚に残しておこうと思ったくらい良い本なんで、皆さん是非読んでみてください。

2009年4月1日水曜日

『不況に克つ12の知恵』(松下幸之助)

不況に克つ12の知恵
不況に克つ12の知恵PHP総合研究所

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文庫本以上に薄~い本なんですが、肉声のCDが付いていたので買ってみました。

本人の声を聞くと、勢いというか、感じ方が伝わりやすいです。

この本には、「腹をくくる」「志を変えない」といったメッセージが12個紹介されていて、一つのメッセージあたり3~4ページの解説が入ってます。

経済学部生として感じた事は、

1.松下幸之助には、完全競争に則って勝負しようとするようなフェアな精神が備わっている。

その起源は、おそらく昔の日本の商人魂だと感じられる。

だからこそ今のビジネスの世界のような、短期利益が第一、では決してできないような結果を出せたんだと思う。


2.簡単に言ってしまえば、目的を持て・プラス思考で行け・行き詰ったら休め、という事が書いてある。

これは、人生において大事なのは当たり前。

ただ、伝え方が上手いな、何かエピソードが多くて印象に残りやすいようにできている。


3.「ダム式経営」とは、つまり長期均衡へ向かう、という事である。

吉野ゼミの過去問にあったんだけど(慶應経済じゃない人はごめんなさい)、

バブルが起こって需要が増える⇒企業数・労働者数が増える

その後、バブルがはじけて需要が減る⇒労働者数は減る、短期均衡では企業数は減らない

というような趣旨を説明させる問題がありました。

利益がマイナスでも、固定費用の一部でもまかなえていれば商売は続けていくんだとか。

でも、市場参加者が、松下幸之助が言うような「ダム式経営」をやれば、

経済に大きなショックはかかりにくいし、プラスが大きいんじゃないかな、と考えさせられました。

ただ、バブルの時に、上昇した需要に食いつかない!っていう、のが出来ないと思うんだけどね。

外資が参入してきて、終了~な感じがする。笑

まぁ、これは難しいか~。

でも、モラル的には、労働者が「使い捨て」になるんだよね。

ちなみに、一つだけ本から引っ張ると、

昔、松下が不況に直面して商品が売れなくなった時に、

職工さん達の労働を半分にして、半分は遊ばせた事があるそうです。

この時代だと、

「遊ばせた=人件費を半分に」

って思っちゃうけどそうではなく、

人件費は半分損になるが、売れない商品のための在庫の費用がかからないからマシ、と判断したらしいです。

根底には、人件費=社員の生活がかかっている⇒減らしてはいけない物、といった考え方がありそうですね。

本のお話としては、

「休んだ時に英気を養って、好況が来たらまたスタートできるようになった」

というストーリーなんですが、

僕はこの賃金=削ってはならない費用、みたいな考え方に感動しました。

まぁ、モラルから考えれば当たり前なんだけど、経済から考えると非効率なので。

ちなみに、
http://www.asahi.com/business/update/0401/TKY200904010317.html?ref=rss

新日本製鉄は4月から、室蘭製鉄所(北海道室蘭市)や釜石製鉄所(岩手県釜石市)など全国5カ所で、毎月1~2日間、従業員の一時帰休を実施する。日給を15%カットする。新日鉄の一時帰休は00年以来。役員、監査役は4~6月の月額報酬の16%を返上する。
だってさ・・・。


三十分で読めるし、肉声CD付きで500円は破格なので、是非読んでみてください。