2009年4月4日土曜日

『「脳にいいこと」だけをやりなさい』(マーシー・シャイモフ

「脳にいいこと」だけをやりなさい!
「脳にいいこと」だけをやりなさい!茂木健一郎

三笠書房 2008-11-07
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starポジティブ心理学をベースにした秀逸な本
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随分前から書店に並んでて、一回買って読んだんだけど、本棚を整理している時にもう一度読みたくなったので読んでみました。

内容はというと、

人生の目的とは、「幸せになる」事である。

某調査によると、人は一定の幸せ度を維持しようとする傾向がある。

宝くじが当たって超ハッピーな人も、数週間後にはもとの幸せのレベルに戻っている。

この「幸せ度」はの50%は後天的なものであり、環境要因は10%に過ぎない。

つまり、幸せの40%は、習慣的な考え方や気持ち、使う言葉や行動によって決まる。

それでは、この残り40%を最大限幸せな方向へ持っていこうではないか、という趣旨で、
  1. ネガティブ思考の「大掃除」をする。
  2. プラス思考で、脳にポジティブな回路をつくる。
  3. 何事にも「愛情表現」を忘れない。
  4. 全身の細胞から健康になる。
  5. 瞑想などで脳を「人知を超えた大いなる力」につなげる。
  6. 目標をもち、脳に眠る才能を開拓する。
  7. 付き合う人を選んで、脳にいい刺激を与える。
の7つの「脳にいいこと」を実践する事で、「幸せ度」が上がるでしょうと解いて、

この7つを詳細に説明しています。

後半の方は宗教っぽいし、反論ができない(=科学でない)ような物も多いんだけど、

「プラス思考でいなさい」「ハッピーに生きなさい」ってのは凄い大事。


読みながら気になった事が2つあって、

一つは、原書のタイトルは"Happy for No Reason"なんです。

直訳だと「理由が無くてもハッピー」といった感じでしょうか?

それが、茂木さんによって

「脳にいいこと」だけをやりなさい!

というタイトルになってる。

脳科学者の視点に立って、こいつは脳にいい事だ!と思って共感したんでしょうが、なんとなくとっつきにくいタイトルに感じました。

アメリカでは、脳とは関係ない、普通の自己啓発本なので、とっつきにくさが変わってるな~という印象を受けました。

二つ目は、「人生の目標は幸せである」というところが、この理論の前提にある事。

これ、英語でどう表現されてるのか、凄い気になります。

英語には主に楽しさを意味する"Happy"という単語に、「幸せ」という意味が付随しています。

フランス語には主に幸せを意味する"heureux"という単語に、「楽しい」という意味が付随しています。

日本語のように「幸せ」と「楽しみ」を区別する言語だと、「幸せ」の意味がはっきりするんだけど、原語版の著者はどのように表現したのでしょうか?

めっちゃ気になります。


まぁ、何はともあれ、習慣として身につけるには良い事が色々書かれてる本です。

本棚整理した後も、棚に残しておこうと思ったくらい良い本なんで、皆さん是非読んでみてください。

2009年4月1日水曜日

『不況に克つ12の知恵』(松下幸之助)

不況に克つ12の知恵
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文庫本以上に薄~い本なんですが、肉声のCDが付いていたので買ってみました。

本人の声を聞くと、勢いというか、感じ方が伝わりやすいです。

この本には、「腹をくくる」「志を変えない」といったメッセージが12個紹介されていて、一つのメッセージあたり3~4ページの解説が入ってます。

経済学部生として感じた事は、

1.松下幸之助には、完全競争に則って勝負しようとするようなフェアな精神が備わっている。

その起源は、おそらく昔の日本の商人魂だと感じられる。

だからこそ今のビジネスの世界のような、短期利益が第一、では決してできないような結果を出せたんだと思う。


2.簡単に言ってしまえば、目的を持て・プラス思考で行け・行き詰ったら休め、という事が書いてある。

これは、人生において大事なのは当たり前。

ただ、伝え方が上手いな、何かエピソードが多くて印象に残りやすいようにできている。


3.「ダム式経営」とは、つまり長期均衡へ向かう、という事である。

吉野ゼミの過去問にあったんだけど(慶應経済じゃない人はごめんなさい)、

バブルが起こって需要が増える⇒企業数・労働者数が増える

その後、バブルがはじけて需要が減る⇒労働者数は減る、短期均衡では企業数は減らない

というような趣旨を説明させる問題がありました。

利益がマイナスでも、固定費用の一部でもまかなえていれば商売は続けていくんだとか。

でも、市場参加者が、松下幸之助が言うような「ダム式経営」をやれば、

経済に大きなショックはかかりにくいし、プラスが大きいんじゃないかな、と考えさせられました。

ただ、バブルの時に、上昇した需要に食いつかない!っていう、のが出来ないと思うんだけどね。

外資が参入してきて、終了~な感じがする。笑

まぁ、これは難しいか~。

でも、モラル的には、労働者が「使い捨て」になるんだよね。

ちなみに、一つだけ本から引っ張ると、

昔、松下が不況に直面して商品が売れなくなった時に、

職工さん達の労働を半分にして、半分は遊ばせた事があるそうです。

この時代だと、

「遊ばせた=人件費を半分に」

って思っちゃうけどそうではなく、

人件費は半分損になるが、売れない商品のための在庫の費用がかからないからマシ、と判断したらしいです。

根底には、人件費=社員の生活がかかっている⇒減らしてはいけない物、といった考え方がありそうですね。

本のお話としては、

「休んだ時に英気を養って、好況が来たらまたスタートできるようになった」

というストーリーなんですが、

僕はこの賃金=削ってはならない費用、みたいな考え方に感動しました。

まぁ、モラルから考えれば当たり前なんだけど、経済から考えると非効率なので。

ちなみに、
http://www.asahi.com/business/update/0401/TKY200904010317.html?ref=rss

新日本製鉄は4月から、室蘭製鉄所(北海道室蘭市)や釜石製鉄所(岩手県釜石市)など全国5カ所で、毎月1~2日間、従業員の一時帰休を実施する。日給を15%カットする。新日鉄の一時帰休は00年以来。役員、監査役は4~6月の月額報酬の16%を返上する。
だってさ・・・。


三十分で読めるし、肉声CD付きで500円は破格なので、是非読んでみてください。

2009年3月27日金曜日

『資本主義はなぜ自壊したのか』(中谷巌)

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言
資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言中谷 巌

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最近、書店へ行くと経済所のトップにあるこの本。

著者は、大学院時代にアメリカで経済を学んだ時に、その理論の美しさに魅了され、新自由主義の論者になったらしいです。

それから数十年とその主張に固執してきた著者が、自身の経験と照らし合わせながら、新自由主義に潜む問題点について解説し、市場原理主義ではいけないと主張している訳です。

経済学部生として興味深かったのは、

経済学の理論の美しさの裏には色々な仮定がある、というのが見逃されている

という主張。

確かにミクロ経済学において市場が機能するための条件は、

・競争的市場である(個人・企業の存在が無視できるほど小さく、市場の条件を受け入れて行動している)
・市場は匿名である
・外部性が無い(他人がどうなろうと、自分の幸せには影響しない)
・独占が無い
・所有権がノーコストで保証されている
・政治はコストがかからない

などなど、実はたくさんの仮定がおかれています。

そんな中で、
「近代経済学に登場する人間は、自らの満足を最大化する目的を持って合理的に行動する存在であり、『社会』という概念は入り込む余地がない」(p.54)
ので、

「『武士は食わねど高楊枝』とやせ我慢をし、それが心意気だと感じる。(p.55)」
とか、
「江戸時代の商人たちは『三方よし』といって、自分だけが儲けるのではなく、相手を儲けさせ、しかも、世間にも利益を還元することが商売の理想だと考えていた。(p.55)」
というところがルーツになっている、「利益は二の次」というような日本社会には、全く定着するはずが無い、というのが著者の主張。

ちなみに、著者によると

「欧米は日本と違う階級社会(p.61)」

であり、そのエリート階級が多くの情報を持っており、

「経済学的にいえば、情報に非対称性があって、情報をより多く持つほうがより大きな利益を上げることができる。(p.66)」

ために、新自由主義による自己責任論は

「アメリカやヨーロッパのエリートたちにとって都合のいい思想(p.61)」

であり、このために社会的に力を持ったと考えている。

とすると、格差が拡大するのも当然、ってところか。


この本は、日本と欧米の文化比較を行っていて、

  1. 西洋文明においては、自然的な存在は基本的に「悪」であり、ゆえに人間がそれを制服しなければならない。
  2. キリスト教において大事なのは、人間と神の垂直的関係。
  3. ここから派生した資本主義においても、自然は商品の一部でしかない。
  4. 日本は古来から自然物を聖なる物として扱っていた、いわば多神教である。
  5. 「自然は天から与えられたもの」という思想、「人間は自然の中で生かされている」という考え方が大切
と述べている。


最後にもう一つだけ取り上げるとしたら、
世界経済フォーラムで出された国際競争力の順位などを見ながら、デンマークなどの「高福祉国家」が台頭している、と著者が主張している点かな。
デンマークでは、政府に収入の7割も取られるものの、社会的な安心が手に入るから誰も文句を言わない、らしいです。
「政府に資金を預け、将来の生活に責任を持ってもらうほうが楽だ」という市民の発想には、共感できる物があります。
今の日本だと、失業すると、最低限の生活が保証されないような気がするので。


最後にコメントですが、史観にぶれが無くて良いのですが、ロジックがしっかりしていない部分が多くあります。

例えば、「西洋文明においては、自然的な存在は基本的に「悪」であり、ゆえに人間がそれを制服しなければならない。」という著者の視点の根拠が示されていなかったり。
EUは環境に対しては、ポスト京都に向けた先導役を買って出ているし、「西洋文明」とくくってしまうのはどうなの?という気もします。

ロジックがしっかりしていない分、都合のいいように根拠をはっつけてるような気もしますが・・・
まぁ有名な著者だし、共感できる点も多いと思うので、是非読んでみて下さい。

経済というより、経済システムとか政治とかに興味ある人が読むといいかも。

2009年3月18日水曜日

『よくわかるブラック・ショールズモデル』(蓑谷 千凰彦)

よくわかるブラック・ショールズモデル
よくわかるブラック・ショールズモデル蓑谷 千凰彦

東洋経済新報社 2000-03
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star丁寧にブラック・ショールズ式を解説している本
starよくわかります

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ブラック・ショールズモデルとは、金融におけるオプションの価格決定理論の一つです。

オプションっていうのは、デリバティブの一種なのですが、興味ある人はコチラへ。

その内容は数学的に難しくて、

「伊藤積分は文系の人には無理である」

「デリバティブで使われる数学は35歳を過ぎたら理解できない」

などと言われています。

そんな伊藤積分を丁寧に解説してくれるのがこの本。

めちゃめちゃハードですが、僕が探した中で一番分かりやすい本だと思います。

普通の人は読まない方がいいんだけど、ファイナンスとかとレーダーとかに興味ある人は是非。

難しい本なので、コメントは短めにしました。

2009年3月17日火曜日

"A Technique for Producing Ideas" (James Webb Young)

A Technique for Producing Ideas (Advertising Age Classics Library)A Technique for Producing Ideas (Advertising Age Classics Library)
James Webb Young

Mcgraw-Hill 2003-01-21
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アイデアはどうやったら生まれるか?についての考察がかかれている本です。

凄い短い本なのですが、重要な点だけまとめると

・アイデアとは既存の知識の新しい組み合わせである。知識を輪のように捉えて、そこに関係性を見出す事ができる人ほど、多くのアウトプットができる。

・アイデアを出す手法とは以下の5段階をである。
  1. 根源的な情報・資料を多く仕入れる
  2. それらの情報を頭の中で整理する
  3. 問題意識について、可能な限り、頭から取り除く
  4. ある日突如として、アイデアが生まれる
  5. 実用的な形へとアイデアを加工して、発表・利用する
・教育は第一段階の部分において、とても重要である。

という感じ。

アイデアを出すという作業を体系的に考えた事は無いけど、でも僕も大体いつもこういう経路を辿っている気がします。

風呂の中とか、朝起きる時とかに、ふっと閃く感じは3→4ですね。

あえて言うなら、3の時に体の疲れもある程度取っておかないと、4にはジャンプできないような気がします。

1940年代に書かれた本が、現代にこれだけ通じるのは奇跡的です。

簡単な英語だし、ページ数も少ないので、興味ある人は是非読んでね。

2009年2月13日金曜日

西洋芸術の旅

僕のブログ(http://toshikikanamori.blogspot.com/)を見てくださってる方は既に知っていると思うのですが、明日から一ヶ月間フランスに行きます。

という訳で、実はひそかに西洋芸術に関する知識を色々勉強してました。

なんせ、中学・高校で習った世界史は殆ど忘れてるもんですから、そりゃ大変でした。

クラシック音楽は大好きなので、曲を聴けばショパンと分かるのですが…

それがどれくらい前の時代なのか、どんな意味を持つのか、なんかは分かんないですね。

これだと、「いい曲だったね~。」くらいなもんで、人と会話が続かない。笑

しかも、パリにはルーブルやオルセーを中心に、有名な美術館が沢山あるのですが、美術に関しては知識ゼロ。

という訳で、西洋芸術に関する本を読みまくってたのですが、その中で良かった2冊を紹介します。

一冊目はコチラ。

教養のツボが線でつながるクラシック音楽と西洋美術 (青春文庫)教養のツボが線でつながるクラシック音楽と西洋美術 (青春文庫)
中川 右介

青春出版社 2008-06-09
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これは、主な作曲家・画家の歴史を簡単にたどった文庫本。

何も知らなくてもすら~っと読めて、大筋がつかめるので、入門者に良い本です。

ただし、この内容を知識として暗記しようとすると大変。

僕は60時間くらいかかって、7割くらい覚えました。笑

「教養のツボ」というタイトル通り、専門的になりすぎずに、また知識の詰め込みにもならずに、歴史のつながりを意識して書かれてるのが良いです。

二冊目はコレ、

西洋美術101鑑賞ガイドブック西洋美術101鑑賞ガイドブック
神林 恒道

三元社 2008-09
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この本は、渋谷のBunkamuraの書店でみつけました。

一冊目の本は、芸術史を理解する事が中心だったのに対して、この本は一つ一つの美術作品を鑑賞するための本って感じです。

見開き1ページに美術作品が一つと、それに対する解説がある感じです。

こういう本を読むと、芸術=感性ではなく、芸術を本当に理解するためには相当な知識が必要であるってのが分かる。

ダヴィンチもベートーヴェンも過去の人だから、彼らは過去の人たちによって評価されたわけだし、その素晴らしさを理解するためには時代背景を知らないといけない。

理系のいわゆる理論書だと、

「この分析手法は、後述する○○法に効率の面で劣るため、現在は実務では使われていない。だが、その歴史的な役割を鑑賞するために、ここには簡単に要約を載せておく。」

とかいう文章をたまに見かけるけど、芸術の場合はこの「歴史的な役割」が鑑賞の醍醐味の一つ。

見て素晴らしいと感じる事も大切だけど、やっぱり知識なんですね。

本当に感じさせられました。

でも、これでルーブル行っても楽しめそうです。笑

2009年2月4日水曜日

『榊原式スピード思考力』(榊原英資)&『コミュニケーション力』(斉藤孝)

まず最初に榊原英資さんの『榊原式スピード思考力』を。

榊原式スピード思考力
榊原式スピード思考力榊原 英資

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頭を上手く使えるようになりましょう、というテーマで色々とテクニックというかポイントが書かれている本です。

「常に逆の立場で考える」とか、「異分野に興味を持とう」とか、言われてみれば当たり前の事。

でも、これら全てできる人がいるかというと、それはなかなか難しいと思う。

そこが榊原さんの凄いところで、当たり前の事を当たり前のようにやる。

特に目新しい事は書かれてませんでした」というコメントもありますが、

そういう当たり前の積み重ねが力になるんだろうな~、と感じさせられました。



次に、斉藤孝さんの『コミュニケーション力』

コミュニケーション力 (岩波新書)
コミュニケーション力 (岩波新書)斎藤 孝

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stars齋藤孝のコミュニケーション論
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stars理想の対話のあり方を再確認しよう
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この本は、コミュニケーションをいかに上手くするか、といった事をテーマに書かれた本。

コミュニケーションとは意味・感情のやりとりである、と定義した上で、
コミュニケーションし、感情を交し合い、考えを語り合う。それ自体が人生の目的なのである。(p.49)
と主張して、「相手の目を見る」「相槌を打つ」といった基礎的な事の重要性を説いています。

また、筆者は、

コミュニケーションの基本かつ奥義は、「沿いつつずらす」ことである。相手の話に沿うことなく、自分の話ばかりをし続けるのではコミュニケーションとは言えない。また逆に、相手に同意ばかりしているのでは、話が展開しない。(p.136)
と、コミュニケーションの本質は「沿いつつずらす」にあるという主張を展開し、そのための具体的テクニックについて述べています。


この二冊はたまたま同時期に読んだのですが、ディベートに関する意見が正反対だったので、ここで紹介したいと思います。

榊原英資さんは、ディベートを行う事は思考訓練として非常に効果があるので、学校などで積極的に薦めるべきだ、という意見を持っています。

情報を駆使して自分の論理を構築する訓練ができ、相手を説得したり、相手の論理の矛盾点を突くようなトレーニングができる、と説明しています。(p.59)

これは、本人が直接言っているのも聞いた事がありますし、他の著書にも書かれているので、榊原さんの本心なのだと思います。

一方、斉藤孝さんは、ディベートでは論理性は大切にするが、相手の気持ちを汲み取ることはなされないため、コミュニケーション能力が向上しない、と考えています。

論理力の低い者同士のディベートでは単なる水掛け論になりやすい事や、論理的な能力を駆使して論点をごまかして相手を言い負かす事になりかねない事などから、ディベート形式の授業には反対しています。

その上で、斉藤孝さんは、
本当に求められている能力は、相手の言いたいことを的確につかむ能力である。(p.10)
や、
何を大事だと思うか、何を正しいと思うか、という価値判断がまず先にあって論理が構成される。(p.12)

という考えを持っているようです。

これに対し榊原さんは、

説得するためにはどうしても論理に加え感性的なものも必要になってきます。(p.81)

と認めた上で、

論理と好き嫌いの感情は切り離せ(p.78)

と言っています。

この二つの視点の違いは、「考える事」を主題に置くか、「コミュニケーション」を主題に置くか、だと思います。

僕は、榊原さんが、

仕事において「一〇〇パーセント人を信じる」ということをできるだけしないように勤めていこうとします。だから私は、人とべったり付き合うということがあまり好きではありません。(p.76)

と言っているところに本質があると思います。

僕の仮説ですが、

榊原さんは、仕事上の目標を第一に捉えているというか、ロジック至上主義という感じなのに対して、

斉藤さんは、人間関係を第一に捉えていて、非常に人間的な考えを持っているのだと思います。

そう考えると、何となく両者の主張に納得ができます。

僕は榊原方式に近い部分があったのですが、最近は斉藤さん方式になろうとしてるのかもしれません。

だから、『榊原式スピード思考力』を読んで、やっぱり凄いな~と感じてから、

『コミュニケーション力』を読んで、やっぱりこういう方向性を目指したいな~と感じました。

まぁ、どちらも良い本だと思うので、是非読んでみてください。

『榊原式スピード思考力』は、頭を普段使わないような「Enjoy!」をモットーとしてる人に、

『コミュニケーション力』は、人間関係に行き詰まりを感じている人にオススメです。